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佐藤優樹と薔薇の花 #hps_jp

 オーディションでつんくが「フォトジェニック賞をあげたい」と評価したモーニング娘。の10期メンバー、「まーちゃん」こと佐藤優樹は、つんくが言う通りの美少女である一方で、事あるごとに「鬼ごっこがしたい」と答えるような子供っぽいキャラクターだ。そして、常日頃から何を言っているのかよく分からないことで知られている。それは、他人にとって分かりづらい例えを用いたり、彼女独自の言葉を使うからだ。緊張することを「緊張がポクポクする」、先輩である道重さゆみ田中れいなのことを「みにしげさん」「たなさたん」と呼ぶ。これらは彼女の不思議な発言のごく一部で、挙げればきりがない。また、たまに自分の名前が書けなくなることもあるという、自由という枠に収まらない奔放さ。ファンにとってそれらは「まーちゃん頭大丈夫か?」と心配するようなことでは、すでになくなっている。そういうキャラクターとして親しまれているということだ。
 なぜ彼女の日本語が怪しいのか。それは不明だ。幼少の頃に英語しか話していなかったという彼女の発言がある。だから、英語圏で生活していたという未確認情報もある。しかし、現在の彼女は英語を話すことは出来ない。ちなみに、北海道で育った彼女のイントネーションに、訛りはあまりない。まったくないわけではない。
 本題に入る。2015年4月6日に発売された雑誌『トップエール』5月号に、佐藤優樹のインタビュー「まーちゃんが見た新しい世界」が掲載された。ここで初めて語られた彼女の思いは、ファンに感銘を与えた。
 「みにしげさんがくれていたでっかい薔薇! それを私たちは一輪ずつ受け継いでいるんですね。その中で譜久村さんがその一輪を大切に抱えて、その赤い綺麗な薔薇に金の粉をかけて、そこから新しい薔薇を作って、そして私たちを包み込んでいく。その中で「今は私たちのモーニング娘。なんです。なんか文句ありますか?」っていう堂々とした感じ? そういうモーニング娘。'15を作っていきたいなと思っています、今は」
 「優樹の中で薔薇っていうのは、悪いものを消すためにあるんですね」
 「みにしげさんが残してくれた薔薇を枯らすのか? そのままにしておくのか? 何かを加えて新しいものを作るのか? それは全然違うと思うんですよ」
 佐藤優樹が、これからのモーニング娘。をこうして行きたいという、決意と受け取れる。しかし、雑誌掲載にあたって読みやすく修正されていると思われるが、抽象的で分かりづらい。
 彼女が言う薔薇とは何なのか。4月15日に公開されたBillboard JAPANの記事「モーニング娘。'15『青春小僧が泣いている/夕暮れは雨上がり/イマココカラ』インタビュー」*1では、より詳しく語っている。その記事は、佐藤と、彼女の後輩に当たる11期の小田さくら、12期メンバー2名(尾形春水と野中美希)、4名の対談だ。佐藤が「道重さんが卒業した後にメンバーが集まって話し合ったりすることもなく」と、自分たちがグループの今後について集まって「こういうモーニング娘。にしたい!」というような話をしたことがなかったことを振り返る。インタビュアーの「道重さゆみ卒業公演で一度完全燃焼してしまった印象もあったんですけど」という問いに佐藤と小田が頷き、佐藤が続ける。道重がリーダーだった頃のモーニング娘。は「家族」で、卒業後の現在は「良い仕事仲間」だと。続く彼女の発言を要約すると、現在のモーニング娘。は、9期、10期、11期、12期、それぞれがばらばらで、まとまっていない。道重はそれをまとめていたから、団結していたからグループが強かった。今のモーニング娘。は団結していないから弱い。だから、どうしたら皆がまとまるのかを、彼女は悩んでいる。
 道重や田中れいななどの先輩に対して、無邪気さをアピールして(何も考えていなかったのかもしれないが)仲良くなっていった佐藤優樹だが、後輩に対しては、どうやってフレンドリーに接していいのか、分からないとも答えている。しかし、先輩としてアドバイスを行っている。私はモーニング娘。だという自信を持って前に出ろ。私はスターなんだという気持ちでやって欲しい。
 そしてこのインタビューでも、薔薇の例えが出てくる。道重さゆみがメンバーそれぞれに薔薇を1本ずつ渡した。しかしそれを束にしなければいけない。まとまっていない今はただ風に吹かれているだけだと。
 4月16日、モーニング娘。メンバーが全国各地で握手会を開催していた。佐藤優樹は地元の北海道へ行った。筆者が作成したTogetter*2によると、何人かのファンが彼女に薔薇の話について聞き出していた。
 歌やダンスが上手くても、メンバーそれぞれの個性が際立っていなければ、モーニング娘。として輝くことはない。道重さゆみが残していった薔薇には、そのような思いが込められている。そして、薔薇には棘がある。金の粉をふりかけて、その棘を隠す。それもメンバーがやるべきことであるらしい。
 道重さゆみが卒業して、グループに変革が求められた。今回だけではなく、リーダーやエース級のメンバーが卒業するとき、このグループが直面してきたことだった。
 2014年、道重さゆみモーニング娘。を卒業すると発表されてから、さゆロス(道重さゆみがいなくなってしまう大きな失望感=ロス)という言葉がファンの間で話題となっていた。デビュー時から「今日も可愛い」と言い続けていた道重がリーダーとなり、後輩を溺愛するようになった。後輩を可愛いと公言し、隙あれば触りまくるさまは多くのファンから親しみを込めて「変態」と呼ばれた。気づいた時には最強のリーダーと呼ばれるようになった。道重がCMキャラクターを務めた吉野家の焼鳥つくね丼はファンから「さゆ丼」として親しまれた。道重は多くのファンに愛され、グループのイメージも(EDMサウンドやフォーメーションダンスのようなクールなパフォーマンスがまずあってのことだが)、道重に習うような、可愛くて愛されるグループとなっていた。そのようななかで、佐藤は道重に甘えてばかりだった。
 残されたメンバーにとっても、さゆロスは深刻だった。あの頃に比べて、グループが駄目になってはいないか。道重がいないモーニング娘。をファンは喜んでくれるだろうか。佐藤は、道重が卒業してからのモーニング娘。について、自分なりに考えていた。道重が卒業し、譜久村聖がリーダーとなったモーニング娘。が素晴らしいグループになるためには、メンバーそれぞれが道重が残していったモーニング娘。らしさを理解し、受け取り、その上で道重とは異なる方法で育てていかなければならない。グループがどう育っていくのかは自分たちの頑張り次第。薔薇とは、そのような例えだ。
 佐藤優樹は、何を考えているのか分からない、真剣にやっていないのではないかと思われるところがあった。しかし、しっかりした考えを持ってグループ活動に参加しているという自覚があることが、このインタビューを読めば分かるだろう。彼女の言葉は分かりづらいけれど、考えていること、思っていることを的確な言葉で伝えることが苦手なだけなのだ。薔薇のエピソードは、そんな彼女なりの答えだった。生き方を決めた者だけが言える、そのような覚悟が彼女の言葉にはある。それが具体的でないのは、彼女にとって、それ以上の的確な言い回しが必要ないからだ。
 佐藤優樹が天才と呼ばれるのは、奇妙な言い回しの奥にある発言の真意が、誰にも言い当てることが出来ない真実であるからだ。これからは、その真実を広く伝えて行かなければならない。もちろん、言うだけではなく行動で示すこと。彼女に課せられた責務は決して軽くない。しかし、すでに彼女は、その重大さを承知しているはずだ。
 困ったことに、彼女のブログを読んでみても、そのような思いは、まったく伝わってこない。おそらく、それらは暗号で書いてあるのだ。

お知らせ

 このブログ内容を掲載した同人誌「Rose Petals #hps_jp」を出しました。下記リンク参照のこと、よろしくです。通販あります。

 これまで出した個人誌は以下をご覧ください。