ここ最近の話だと、月刊ニュータイプ連載中のファイブスター物語エピソード「運命のラキシス7444」が始まってから、これウルトラマンじゃないかと思うことが、たまにある。
戦闘ロボットになったツバンツヒの顔だったり、7月号の表紙の左側にいる女性(ゴリリダルリハ)の配色など。ラキシスを襲った連中のなかにはウルトラ怪獣のようなシルエットが見られたか?
永野護はニュータイプのQ&A企画で、子供の頃「ウルトラマンに変身したかった」って答えていたから、あながち外れていないのかもしれない(ニュータイプ2014年9月号)。
ということで、上記ブログの続き。以下、ファイブスター物語の最新エピソードについて書くので、ニュータイプ最新号のネタバレありということで、よろしくです。
永野護とファイブスター物語 これまでの流れ
- 2004年11月
- ニュータイプ2004年12月号掲載にて連載休止
- 映画『花の詩女 ゴティックメード』制作に入る
- 2005年
- 『花の詩女』制作スタジオ「オートマチック・フラワーズ」設立
- 2005年~2008年
- 2011年~2012年
- リブート1~7発売
- ファイブスター物語ニュータイプ連載時のバージョンを掲載する単行本シリーズ
- リブート1インタビュー「一刻も早く連載再開したい。でもその前にやらなきゃいけないことがある。だから今は「花の詩女 ゴティックメード」を作っている」
- リブート2デザイン解説ページでは降板したため使われなかったモビルスーツデザインをモーターヘッドに流用した経緯など
- リブート1~7発売
- 2012年10月
- 連載休止から映画公開まで一貫して「この映画はファイブスター物語ではない」と公言していた
- 2012年11月
- 2012年11月
- 2013年3月
- トレーサー Ex.2発売
- キャラクター解説「再開後におわかりいただけるでしょう」との但し書きあり以降この時点では意味不明な解説文
- トレーサー Ex.2発売
- 2013年4月
デザインズ
ファイブスター物語のロボットをGTMに変更した理由について永野護は、モーターヘッドが古くなったから、としか言わなかった。
2013年の連載再開と同時に、多くの設定が変更された。それらは作品集デザインズ4として2014年にまとまったかたちで発表された。モーターヘッドからGTMへの変更、人造人間ファティマの体型のスリム化、主武装である剣をガット・ブロウに統一など、他にも色々ある。それらは全て映画『花の詩女』の設定に準じたものとなっていたが、正確に言えば、それは逆だ。それらの「ファイブスター物語の」変更点は2012年に公開された『花の詩女』制作と並行して、読者を驚かせるために秘密裏に進行していた。この映画を見た読者は、ファイブスター物語のロボットがどんな動きで、どんな轟音を立てているのかを知ることとなった。
漫画の絵から音が聞こえてくる。永野護は、この体験を読者を与えるために『花の詩女』を作ったのかもしれなかった。
設定変更は、連載再開のニュータイプ発売時に変更は無事に完了した。その後、デザインズ5、デザインズ6と、新たな設定が公開された。
ところが、実際には、さらなる修正が行われ続けている。それらは、ニュータイプの連載1ページ目、いわゆる「扉」または表紙と呼ばれるページにて発表される。連載中の台詞や脚注に書かれることも多い(さりげなく書かれているが重要なものだ)。これまでには、そういった発表は、追加設定であることが多かった。しかし、連載中のショウメ争奪戦にて、これまでのデザインズの記述とは明らかに異なる変更が発表されたのは、驚きだった。もしかしてショウメ争奪戦よりも前からそういうことはあったのかもしれないけど、忘れた。
連載再開にあたり入念に仕込みに仕込んで作られた多くの新設定の一部は嘘だった。嘘とは言い過ぎだが、要するに、作者の永野護のなかで、まだ定まっていない、あやふやな点があり、連載を描きながら、やはりこれで行こうと決めていく。そういうことなんだろうと思っている。
ニュータイプ2020年6月号と7月号では、COVID-19(いわゆる新型コロナウィルス)拡散防止の緊急事態宣言を受けて、どうしても「3密」になるアシスタントとの共同作業が困難であると判断し、やむなく連載を中断。永野護個人で作成可能な企画として急遽「デザインズ」に差し替え、未発表の新設定が公開された。これは刊行予定のデザインズ7からの先行公開でもあったはずだが、とにかく、驚きの大発表ばかりであった。
懐園剣を作ったのは天照帝だった!
星団暦2020年に何があったのか?
レディ・スペクターの正体が!
タイカ宇宙の独裁者とは?
色々あるけど書ききれない。その多くは、連載中のラキシス7444の補足であったり、スタント遊星攻防戦についてのメモ、そして7777年以降に誕生する者たちについての予告など、広範に及ぶものとなった。これまでのデザインズシリーズでの設定を覆す、今回のニュータイプ掲載「デザインズ」にて公開された新設定については、いちいち書き記すのは面倒なので、デザインズ7を気長に待ちましょう。なお、繰り返しますが、以下には「デザインズ」のネタバレを含みますので、よろしくです。
キャラクター
- ショウメ
- マドラ
- オージェ
- マドラと同様、超帝國剣聖のひとりであった女性。レンダウドの名でベラ攻防戦から登場し、行き場を失っていたところを天照帝に拾われてミラージュ騎士団メンバーとなる。超帝國剣聖とは、星団暦より以前の超帝國の時代に君臨していた炎の女皇帝ナインの親衛騎士として化け物のような破壊力を持つ戦闘人種。であったのだが、どういうわけか星団暦の現在に出現している。超帝國時代の「素手でGTMを破壊する」戦闘能力は既に無いはずなのだが、何かのきっかけで覚醒するらしい。天照帝の勅命によりショウメ争奪戦に参戦。マドラをかつての名、プロミネンスと呼ぶ。ラキシスのサポート下でGTMマグナパレスを駆りバスターランチャーを3連射する。その後、動けなくなったマグナパレスのコクピットで眠りに落ちたが、マグナパレス自身はラキシスの呼びかけに応じて戦闘に参加し続けた。
- ツバンツヒ
- マウザー
- スペクター
- ミラージュ騎士だが役立たずの道化師。天照帝だけが彼の正体を知っている。ショウメ争奪戦においてラキシスを保護する。
- カイエン
- 剣聖。魔導大戦初期に戦死したが、いまだに最強騎士と語られる。無類の女好き。
- マキシ
- カイエンの息子。めちゃくちゃ強い。剣聖。バランシェファティマでもある。
- バランシェ
- AF(ファティマ)ガーランド。天才。第一作のクーンは騎士級の戦闘能力を備える星団法違反のファティマ。天照帝と出会い、研究対象として、そして友人として付き合う。制作した45体のファティマは例外なく高性能で異端。弟子のミースはバランシェの名を継ぎ、バランシェ亡き後、46番目のファティマ、マキシを産む。
- 天照帝
- マグナパレス
- 天照帝と永久の時を一緒に過ごしたいというラキシスの願いのままに、天照帝が建造した黄金のロボット。通常のGTMとはかなり異なる。自己意志が強く、勝手に動き回ったり、しゃべったりもするらしいが、これまでに登場したのは数回しかない。
- 懐園剣
- ラキシスの危機を救うために赤子の天照帝(星団暦2020年)が作った神剣。時空を超えて出現する、意志を持つ剣。この世のものではないものを斬るために誕生したので、通常の、3次元世界での戦闘時では他のガット・ブロウと変わらない。
- ラキシス
運命のラキシス7444
ラキシスは茶色のショートカットで身長が低い少女だが、時として彼女は藍色ロングヘアの女として読者の前に現れる。身長も高くなっている。これが未来のラキシスの姿であることが連載初期から予告されている。AFガーランドのモラードは、この「変身」したラキシスを目撃している。
ニュータイプ2020年6月号掲載の「デザインズ」によると、連載に登場している現時点でのラキシスとは別に、高次元の弥勒菩薩ラキシスが姿こそ見えないが存在しているのだという。これはぼくの想像だけど、これまでに何度か行われた「変身」は、高次元のラキシスの力によるものと考えられる。
過去に、浮遊城での内乱にてミラージュ騎士団レフトの天位騎士シャフトとの戦闘で勝ったことがあるラキシスは「変身」などしていなかったので、元々ラキシスは天位騎士を超える戦闘能力を備えていることが読者には知られていた。もちろん、一般的には知られていない。ファティマが騎士級の強さを備えることは技術的に不可能とされ、それは星団法違反だからだ。天才ガーランド、バランシェだからそれが可能だった。バランシェ第一作のクーンや、ラキシスのすぐ上の姉にあたるアトロポスが騎士と同等の力を備えていることが確認されている。そしてラキシスは、バランシェの手によってファティマを超える存在として作り直された経緯があった。
ファイブスター物語第6話Act4ショウメ争奪戦のインサートエピソード、ラキシス7444がニュータイプにて連載中。元々はショウメを狙って現れた異世界からの敵と戦うラキシスとその一味、といった話だったのだが、どさくさに紛れてラキシスを狙う者たちも出現。これがもう、とんでもない話で、登場するキャラクターが全て神レベルの強さ。我々にとって神または悪魔としか呼べない存在ばかりが勢揃い。次々と出てくる奴らは、殺しても死なないような者ばかりなので、必殺技も、惑星を破壊、消滅させるレベルの破壊力だったりする。
単行本13巻と14巻に収録されたエピソード、ベラ攻防戦では、ファイブスター物語での主な兵器であるGTMによる戦闘を丁寧に描いていた。GTMというロボットを運用する軍隊、騎士団においての整備の重要さであったり、GTMの定数と実際の稼働率など、軍隊としての実態などを細かく描いていくエピソードだった。ところが、連載中のラキシス7444では、一転して、3次元の常識が通用しない連中との戦いとなった。「あまりの馬鹿馬鹿しさにファイブスター物語を読むのをやめても良し」とはデザインズ5にて永野護が書いた文章で、超帝國剣聖の強さについて説明したものだったが、デザインズ5を読んだ時点では、それが何を意味するのか正確には分からなかった。超帝國剣聖が「素手でGTMを破壊する」という文章もあり、とんでもない強さだということは伝わってきたが、果たして、それでファイブスター物語を読むのをやめてしまうということになるのだろうか?
だけど、ラキシス7444での戦闘を見るにつけ、これまでのGTMでの国家間の戦など比較にならない、神レベルでのゲームを見せられて、なるほど、お話にならないなと感じてしまった。常識はずれの強さなので、強さが分からないレベル。ここに何百騎のGTMが出てきたところで、一瞬で消されてしまうだろう。ベラ攻防戦で見られたような、これまでのGTM戦闘は何だったのかと、呆れてしまう。そう感じてしまっても仕方ない。
だからといってぼくがファイブスター物語を読むのをやめてしまうということはない。ここまで書いてきたこと、その全てが、面白いからだ。
連載中のラキシス7444での出来事。ラキシスについてだけ振り返ってみる。
ショウメ争奪戦にて異界の敵に殺されかけたラキシスは、藍色の髪のラキシスに「変身」した。そこからが無敵だった。超帝國剣聖を上回るスキルで立ち向かい、懐園剣を自在に操り、異形の者たちを次々と倒し、次元回廊で消し去った。これまでに登場した、ありとあらゆる騎士のなかで最も強いことは明白となった。これが、ラキシスの本当の力なのだと、ぼくは震えてしまった。
しかし、ちょっとした油断でラキシスはピンチに陥った。その直後に出現したスペクターによって助け出され、保護された。以降は、ラキシスのファティマスーツの宝石から強力な下僕たちが出現、召喚され、バトルは続いている。
なお、ニュータイプ2020年7月号掲載の「デザインズ」にて、懐園剣(雄剣)の本来の所有者がラキシスであることが公表された。
月刊ニュータイプ2020年7月号の表紙公開です。表紙を飾るのは、永野護描き下ろしイラストによる「ファイブスター物語」。6月10日発売です! #Newtype pic.twitter.com/wRQRI8krsn
— ニュータイプ編集部/WebNewtype (@antch) 2020年6月4日