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萌えぎのエレンのメインブログです

永野護と小林誠のZガンダムという時代

 ぼくが初めてリアルタイムでオンエアを全話チェックしたアニメ作品は、富野由悠季監督の機動戦士Zガンダムだった。なぜこのアニメだったのか。最初のガンダムに熱心になれなかった自分にとって、ここから見ればガンダムファンとしてスタートラインに立てる、やり直しがきくとでも思ったのだろうか。
 ゼータガンダムが面白かったかときかれても、どうだったか忘れてしまった。あの当時の「ささくれた」気分が反映されていたのかもしれないし、放映当時ならともかく、現在では他人にお勧め出来るようなものではない。目を通しておけば逆襲のシャアという映画を楽しめる、その程度の作品でしかない。泥沼の人間関係はエヴァンゲリオンに影響を与えたのかもしれない。
 アニメの内容よりも問題だったのは、メカデザイナーが乱立してモビルスーツのデザインラインが滅茶苦茶になったことだった。一応書いておくと、モビルスーツとはガンダム世界でのロボットの総称だ。この頃すでに永野護ファンとなっていたぼくにとっての楽しみは、アニメ雑誌に掲載されていた永野デザインのモビルスーツだった。前作エルガイムで永野が考案したロボットの内部骨格、ムーバブルフレームはゼータガンダム世界でのモビルスーツ設計の標準となった。永野のデザインはリックディアスや戦艦アーガマ、ノーマルスーツ(宇宙服)やモビルスーツコクピットなど本編で採用されたものの他に、永野版ガンダムと呼ばれる準備稿も存在していた。それらの永野ガンダムアニメ雑誌に掲載されていて、ぼくは、それらのデザインに夢中になっていた。これがもし本編に登場したら、すごいことになるだろう。そのような想像をふくらませていた中学生だった。永野版ガンダムは3種類ほどのバリエーションが公開されていたはずで、それらは藤田一己によって百式としてデザインし直され、または番組後半の主役モビルスーツであるゼータガンダムの骨格となった。そして、オンエアと同時進行で刊行された富野由悠季による小説版ゼータガンダムの挿絵は永野が手がけていて、永野版ゼータガンダムなどのオリジナルデザインが披露されており、これも近未来のガンダムと呼べる斬新なものであった。
 しかし、永野護デザインのガンダムが本編に登場することは、なかった。
 話を戻すと、当初、永野は、富野監督からの要請もあって、この作品のメインのデザイナーとなるはずだった。しかし、リックディアスや永野版ガンダム案などのモビルスーツのデザインに対してスポンサーなどからの反発があり、早々に降板させられた。この初期の段階で永野がデザインしたリックディアスなどはアニメ本編で使われたが、永野のスタッフクレジットはデザイナーではなくデザインワークスというよく分からない役職となった。その後、主役のゼータガンダムなど多くのデザインは元々のガンダムのデザイナーである大河原邦男藤田一己ほか多くのデザイナーの共同作業によって行われた。デザイナーの乱立と、それに伴うデザインラインの統一性のなさは、ゼータ世界での敵味方が入り乱れた状況に合わせて、なかば正当化された。
 そして、再度デザインを依頼された永野はキュベレイハンブラビのデザインを提出。キュベレイは敵ネオジオン代表ハマーン・カーンが搭乗するモビルスーツとして、目覚ましい活躍をみせた。現在ではリックディアスキュベレイは歴史に残る傑作モビルスーツとなっているが、当時の評判はよくなかった。リックディアスが「モビルスーツらしくない」と、保守的なガンダムファンから罵倒されたことを、ぼくは今でも忘れることはない。永野ファンのぼくに言わせれば、そいつらは旧ガンダムに取り付かれた、悪しき亡霊だった。
 百歩譲って、「ガンダムのことを大切に思っている」彼らの発言は仕方なかったとしても、当時ぼくが最も不愉快だったのは、最初にハイザックのようなものを出してきたことだった。ハイザックのデザインそのものよりも、「とりあえず敵モビルスーツとしてザクを出しておけ」のような安易な態度が許せなかった。そもそも、ガンダムの続編であり、ゼータガンダム登場までの主役モビルスーツガンダムマーク2だ。ガンダムと名の付く作品の主役がガンダムであることには、とりあえず異論はない。しかし、だ。
 最初のガンダムにて、敵のモビルスーツは、ザク、グフ、ドム、ゲルググと進化してきた。永野デザインのリックディアスはドムに似せてデザインされたものだが、反発があったことからも分かるように、それは斬新なラインだった。前作から7年が経過しているのだから、モビルスーツだって進化する。リックディアスは、そのようなデザインであった。ザクに似せることが悪いわけではない。ハイザックのデザインにはリックディアスにみられるような進化が感じられなかった。名誉のために書いておくと、主要モビルスーツのデザインをまとめた藤田一己の才能をぼくは認めている。デュアルマガジンでの彼の仕事も優れたものであった。
 ハイザックの保守的なデザイン、これは誰が見てもザクだというデザインは、スポンサーの指示に違いない。リックディアスのデザインを認めず永野を降ろした保守的なスポンサーだからだ。
 ぼくがこの件での不満をツイッターに書いていたとき、こういう意見を頂いたことがあった。
 「それだけザクの性能がすごいということなんでしょう。ジオンの技術が」
 なるほど、基本設計が優れている機体、名機であるということ。それは分からないでもない。例えば、小林誠がデザインしたマラサイは、ザクに似たものだが精悍なデザインラインであり、これならば後継、モデルチェンジとしてふさわしいとぼくは感じた。こちらをハイザックとして出すのであればよかったと、ぼくは今でも思っている。
 ハイザックのデザインとは、保守的なガンダムファンを勝手に規定し、ザクにみえるものを出しておけば安心するだろうというものであり、かつての人気国産車がキープコンセプトばかり気にしてやがて廃れていく過程にしか、ぼくにはみえなかった。
 ちなみに、キュベレイは永野版ザクとしてデザインされたと永野は語っていた。改めて見てみると、なるほど、これはザクの最終進化バージョンだと頷ける。
 そしてぼくは、モビルスーツをデザインするのなら永野護小林誠しかないと確信した。
 小林誠の傑作デザインといえばジオだろう。これは後から知ったことだが、小林がデザインした、ジオ、バウンドドック、ガザCなどのモビルスーツデザインのアイデアは、彼が元々持っていたロボットデザインのシリーズ「ハイパーウェポン」からのストックだった。ぼくが小林誠を知ったきっかけは、模型雑誌でのモデル造形記事だった。立体造形と漫画にて展開する小林のガンダム世界は、例えるなら横山宏宮崎駿が描くガンダムとでもいうべきタッチと、大胆にアレンジされたモビルスーツが独特だった。小林の描くガンダム漫画は、シャアがジオに乗りビグザムも出てくるジオン軍という、パラレルワールドであった。小林が描くゼータガンダムはデザインはアニメのままだが天地が逆であり、「ハイパーウェポン」に登場する宇宙戦闘機ナイトファイターを思わせるものであった。
 一方、永野は、小説版ゼータの挿絵の他にも、アニメ雑誌などでオリジナルゼータ世界を描いていた。永野版ハマーン・カーンファイブスター物語の登場人物のテストパターンでもあり、永野版ゼータガンダムは「百壱式」という名称であった。その、百壱式ゼータガンダムは永野版百式の後継機種だという、永野独自の設定も興味深いものだった。繰り返すが、アニメに出てきた百式藤田一己デザインだ。
 永野や小林の「俺ガンダム」について、否定的なガンダムファンがいたかもしれない。しかしぼくは、これが最高に面白かった。それは、才能のあるデザイナーがやりたい放題だから、それが愉快痛快だったのだ。ぼくは、永野護小林誠だけにデザインさせて新ガンダム世界構築だったら、本当によかったと思っている。例えそれが理由で結果的に現在までガンダム産業が続くようなことにならなかったとしても、そんなことは、どうでもよかった。ぼくに言わせれば、ガンダム産業がいまだに続いていることこそが、不気味で仕方がないのだ(この考えはモーニング娘。のファンになることで改められることになるのだが、ここでは割愛)。

永野版ハマーン・カーン。懐園剣を作った人物のデッサンでもある。

追記(7月11日)

 普段は日当たり50以下のアクセスである当ブログ、今回の記事に1000を超えるアクセスを頂いて驚愕アンド感謝であります。つきましては、これを記念しての何か面白い企画を考え中です。次回更新をお待ちくださいです。
 ちなみに、ぼくのツイッターもありますので、暇なかたは見てやってください。
 https://twitter.com/moegino

追記2(7月11日)

 おかげさまではてなブックマークもされているみたいです。
 http://b.hatena.ne.jp/entry/moegino.hatenablog.com/entry/mn-mk-zgundam
 で、数名の方からご指摘を頂いていました件、修正しました、はい。ありがとうございますです。

×ハンムラビ
ハンブラビ

 ですよね。言われるまで全然気づかなかった。ほえー。

告知(7月11日)

 今日一日で2715アクセスを頂いております(20時現在)。まあこのブログは一日当たり50アクセスあれば「すげー!」って感じでした。桁が全然違います。自分のブログのハイスコア。これは当分破られないでしょう。とても驚いていますし、感謝でございます。多くのコメント、直接間接、だいたい読んでいます。書かなければならないことが増えたなあと感じております。これも感謝です。でもぼくがガンダムの悪口を言ってるだけの奴だと思われるのもしゃくだし、これはじっくり腰をすえて書かなければならない。ということで急遽決めました。

 来月の夏コミにて永野護ファンブックとして文章の同人誌(コピー誌)を出します!

8月15日(金)
コミックマーケット86
http://www.comiket.co.jp/info-a/C86/C86info.html
「はなごよみ」西い-17a(id:osito
https://webcatalog-free.circle.ms/Circle/11302717

 いやあ、「やっぱりかー」「初めから出すつもりで書いてたんじゃないの?」「なぜか英数字に全角使ってるしね」とかいう意見もあるかもしれませんが、正直、自信がなかったんですよ。これまでに、エヴァとか萌えとかヲタクとかハロプロとかのエッセイをいちおう書いてきたのですが、ぼくにとっては永野護>(超えられない壁)>エヴァハロプロなんですよ。なので、一番好きな対象で冷静に文章を書ける自信が、まったくなかった。「痛い」だけのファンのつぶやきでも困りますし。まあ、このブログを読んで頂いて「痛い」ファンだなってことはもう分かったよという説もありますが、とにかく、出すからには徹底的に書きます。この記事を含む、今年アップしたFSS関連のブログ記事に加筆したロングバージョン、現在執筆中の結論「ロボットとは」、そして時間があれば、ぼくの幻のタイトル「つんくのロックと永野護のロックは同じだよね」をドロップ。ということで、急遽頒布決定です。よろしくでーす。なお、新刊のタイトルは未定です。これから考えます。

お知らせ(2015年1月12日)

 ファイブスター物語について書いたブログ記事をまとめたコピー誌『NAGANO!』を頒布しました。はなごよみウェブサイトで通販も行っております。


当時の告知ブログ

はなごよみウェブサイト
http://osito.jp/dojin/order.html